キャミソール事件

私はものを深く考えるのが嫌いなので、悩むことがない。
友達に悩みを相談されると、困ってしまう。相談はそりゃ親身に考えてみるのだが、
さて終わった後、今度は私の番?と大変なプレッシャーが押し寄せてくる。なにかひねりださなくては…。

そんなわけで悩みといったら、胸がでかすぎることくらいだ。
どのくらいでかいかというと、自分で吸えてしまうくらいの爆乳である(←違う意味でやばい)
…というと、みんな「自慢じゃん?」とか「うらやましい」とか、そういう反応しか見せないが、
私はこれまでの人生ちちがでかくて得したことなんて何もない。
学生時代は走るたびに見世物になり、かわいい下着もなく着たい服も着れず、カバンのななめがけをすると
ものすごい状態になり、昔の彼氏には「牛の乳みたい」といわれ、こんなにジャマで重いのに
今ではなにも使い道がない(笑) ちちなんかでかくても何もいいことなんてないのである!
先日私はちちにしこりがあることに気づき、病院に行ったら「ガンかもしれない。もしそうだったら
乳は取ることになる」といわれたが、「どうせ取るなら両方取ってください」といいのけたほどである。
幸い良性だったけど。

先日免許書き換えの際、私は大変なことに気がついた。今回が20代最後の書き換え…。
この後は30代に突入してしまうのである。今回の写真は3年間(←やっぱりね)使うのだし、
バッチリ決めなくては…!!
20代に許されて、30代には許されない服装、それは…
憧れの「キャミソール」である!
私は昔からキャミソールにとっても憧れていた。こんなちちでは肩ヒモのないブラジャーなんて
怖くってつけられやしない。だからってノーブラで外にでるわけにもいくまい。
しかしもう後がない、20代最後のチャンスである!これを逃したら一生後悔するかもしれん。
一大決心でキャミソール&肩ヒモなしブラを購入。
そして顔のほうは、いつ来るとも知れぬ結婚式用に夜な夜な部屋で一人、
研究を重ね皿スペシャルと名づけられた宝塚も真っ青のフルメイクである。

すっかり女優きどりの私、はりきっておでかけだ。しかし家をでたところで隣のおばさんの
車にはねられた。その日の暗転を予感させたが、今日は記念すべき20代最後の免許書き換え日!
くじけずにでかけた。執念ですな。
警察のは映りが悪いのでわざわざ免許センターに出向いていよいよ写真撮影。
カメラに向って、さあ!目をパッチリ開いて!失敗はゆるされないぞ!

待つこと数十分。出来上がった写真は世にもおそろしい、あるまじき、信じがたき写真であった!
なんと目玉が上のほうを向いている。
三白眼なんて生易しいもんじゃない、完全にイっちゃってるひとの表情である。
女優は女優でも、まるで火サスの死体だ。へたれエキストラだよ…。
大体モニターでわかるだろーが、一言言ってくれよ!公務員!不親切すぎるぞ公務員!
自慢のキャミソールにいたってはフレーム外。紐だけ。ブラのまんまで撮ったような、あるいは
タダの裸のように見える。オーマイガッ!ちゃらり~~鼻から牛乳~(←古すぎ)


行きはあんなに気合がはいっていたのに、帰りのさみしさといったら…筆舌に尽くしがたい。
もう世の中がまっくらである。こんな免許証を3年も使わなきゃならんのか…。
がっくりと肩を落として、ヨーカドーでたこ焼きをヤケ食いしていると、「皿さんじゃない?」
声をかけてきたのは高校時代の同級生!あらやだ~なにもこんな若作りの日に…!
でもちょっぴりラッキー?若い(作りの)私を見てもらえて♪
ちょっと腕からは血が出て足は青あざだらけだけど、気にしないでね♪
女優魂がメラメラと不死鳥のように復活してきた。すっかりノリカ気取りの私。

あんたいい年こいてこんな格好もうできないでしょ?私はしてるぞ!(…バカですな。)
話している内に、彼女の視線が私の胸にきている事にうすうす気づいていた。
彼女が立ち去った後、なんであんなに見ていたんだろう?と、胸に目をやると、
そこにも信じがたき光景が!肩ヒモなしブラなんてやったから、大きすぎるちちが片方
ブラジャーからこぼれている!!そして年のせいかハリのなくなったちちは横の方に
だらしなくでろ~んとなっているではないか。
キャミソールからさえもうちょっとではみ出しそうである。おいおい、こりゃ犯罪ものだー(泣笑)

形悪すぎる胸をみて、彼女は「あんたもう、終わってるよ…」とでもいいたかったに違いない。
無言でいてくれてありがとう。
こんな天中殺のような日を二度とむかえないためにも、キャミソールは二度と着ないと心に誓った皿であった。

帰ったら隣のおばさんがお詫びの菓子を持ってきてくれた。うまかった。