8万円の落とし前

誰でも車を運転する人なら一度は警察に捕まったことがあるはずだ。
ない人、いますか?聞いたことありません。
それが、この私、免許を取って(約)10年間捕まったことはなかったのだ。
ペーパードライバーってワケではない。毎日30キロの道のりを通っていたのである。
無事故でも、もちろんない。優良ドライバーってわけでも、絶対ない。
要するに運がよかったのだろう。いつしか「私は捕まらない」という驕り、
高ぶりが芽生えていたのである。
奢る平家は久しからず。この私の「捕まらない伝説」にもついに終焉の時がやってきた…。

ある夜、いつものイナカ道に一台のノロくさい軽トラがいる。
50キロの道を50キロで
走っている!
こんなのの後にくっついてイライラするよりは、抜かしてしまった方が精神衛生的にもよいのだが…。
とりあえず大人しくしたがうか…。と、超イライラしながら1キロほどガマンしていると、
そのノロマは曲がってくれたのである。私の煽りも功を奏したのかもしれない。
やったー!!…と、とーぜん私は今までのウップンをはらすかのようにいい気持ちで走り出した。

しばらくすると、向こうで赤い棒を振り回している人がいる。
「工事かな?」
捕まったことのない私、かなり近くまで来て警察であることに気が付くまで
「こんなとこ工事してんじゃね~よ」などとひとり言をいっていたのであった。
しかしよくよく見れば警察官。「ああ!とうとう私にもこの日がやってきたのか!」
伝説の崩れ去った日。しかし、初めての経験なのでなんだかドキドキ…♪
「なんでそんなに急いでいたの?」 「イヤ~急いでるっていうか…(いつもこの位なんで)…」

私はなんと(軽の分際で)93キロで走っていたので、43キロオーバーということで、
その場で免許証を取り上げられてしまった。
「○日に裁判所に来てください。」
エッ裁判所?スピード違反くらいで、そんなに大事なの~?
みんな裁判所に行ったなんて言ってただろうか?
それに免許証もこんな、赤い紙にされてしまって。
みっともなくてレンタルビデオ屋の会員にもなれんわい。

しかし家に帰って聞いてみると、フツーは裁判所なんかに行かないらしい。
職場でも、友達にも聞いてみたが誰も行った事がない。これは大変だ!一体ナニをされるんだろう!
みんなそんなにスピード違反ってしてないの?

その日は会社を休んで裁判所に行ったのである。罰金は、いくらか想像もつかなかったけど…。
行ってみると、30人くらいの人がいただろうか。しかし女は私一人だけであった。
珍しい存在の私、ちょっぴりモテていた(笑) みんなの話題といえば「何キロで?」
「いやー43キロです」「お!そりゃ高いよ。俺は35キロ」…
といったキズのなめ合いをしているうちにあっというまに裁判は終り、
なんと罰金8万円!がっでーむ!

隣にいた酒気帯びのおっさんだって5万円なのに。スピード違反の方が罪が重いなんて!
スピードってついウッカリって感じだけど、酒気帯びっていったら確信犯って気がするがねぇ。
などと自分の罪をたなにあげてみる。

あとで振り込めばいいんだろう…などと甘い考えをもっていたが、

「じゃ、そこの窓口で払ってください」

今すぐかい!

6万円しか持ってきてないよ!急いで銀行に走る。
しかしビンボーな私はこの6万円でさえ、銀行の定期預金を解約して捻出したものであったのに、
走っている間になんともバカバカしくなってきた。
8万円もだして何も残らないなんて…(だから罰金なんだって!)


さて、前置きが長くなったが、ここからが本題である。
もうこうなったらヤケだ!定期預金の残り22万円、使いまくってやるぜ!

罰金を払い終わった私、まずホームセンターに行ってねずみ取り対策用レーダーを入手。
8万円を思えば15000円くらい、安い安い!!(反省の色なし)
そして電器屋さんに行って、前から欲しかった32型ワイドテレビをお買い上げ。
ついでにビデオも調子悪かったのを思い出し、衝動買い。

勘定を払っている間に、レジの隣に「脂肪計つき体重計」を見つけ、これもついでに買ってやった。
その後ライトオンに行き、助手席がいっぱいになるほどどっさりと洋服を買い込んだ。
さらに普段は面白いかどうか確かめてから買っていたDVDソフトを「ちょっと観たいかも」クラス
まで太っ腹に買っちまった。その日の内に使い切ってやった。わははは!

まるで目方でドン!のような、計算不要の豪快な買いッぷり。
実に気持ちいいぞ。あ~~スッキリした!
ここまで買うと8万円が小さく感じられるから、アラ不思議。
しかし脂肪計つき体重計は余計だったと、いまさらジローな後悔をした皿であった(笑)