酒ぐせのわるい人

結論から言うと、それは私だ。
だれでも酒の失敗の一つや二つはあるものだが、わたしの場合は多すぎる。
今思い出しても、穴を掘って埋って死んでしまいたいほど恥ずかしくなる。
あるいは、私は少しも覚えていないがその場にいた人たちには一生忘れられない
という話もある。
しかしここではちょっとオチャメでほほえましい思い出を披露しよう。

あれは…わすれもしない、12月30日のことであった。
仕事納めのあと恒例の打ち上げがあり、私はいささかのみすぎてしまった。
方向の同じ年配のYさん(故人)と電車に乗ったが、途中からYさんの話していることが
分からなくなった。
「あ、そうなんだ~。へえ~!ふう~ん」などと適当に相槌を打ちながらも、まったくわからない。
話の意味がわからないのではない。 何を話しているのかわからないのだ。
コレは経験上まずい兆候であるといえた。「今日はちょっと飲みすぎシールだな…(死語)」
この反省が長く続けば、何度も同じ失敗はしないのだが。

手前の駅で私一人が降りた。Yさんはもっと遠くまで帰っていくのだ。一生懸命話してたけど、
なんだったんだろ? で、階段の方に行こうとしたが、急に酔いが回ってしまった。
ダメだ…! ベンチで休んでいこう! しかしこんなところで寝てしまったら、
凍死するかもだぜ。
ただ横になるだけ… … … … …いつしか意識は遠のいていく…

ふと遠くの方で笑い声がした。しかもわっはっはーわっはっはーと、かなり豪快である。
…ったく、この夜中に誰が笑ってるんだ?うるせーな。ゆっくり寝られやしない。
ん?もしかしてこの俺様を笑っているのか?ちょこざいな。
が、気が付いてみると、笑っているのは私であった。
げっっ!こんなに大声で笑っちゃったよ。何が一体おかしかったんだろう?自分でも
ちょっと面白かった。

しかし事態はもっと深刻だ。ベンチで寝ているつもりだったが、いつのまにかホームの
地べたに寝ていたのである。
しかも黄色い線からはみ出している。
駅員に怒られる!いやそれどころか、ヘタしたら線路におっこちるところではないか。
まだジベタリアンなどいなかった時代だ。地べたはキタナイと思っていたわたしが、
おっさんがペッとつばを吐く地べたに、顔をすりつけて眠り込んでいたのである
その上私の寝ていたのは階段の下のところで、よくゲロなどが吐いてある超ばっちいゾーン
であった。

笑っている場合ではない。帰らなければ…!たちあがったが、その頃には体も冷え切って、
足などしびれて動かなかった。

それにしても、誰も起こしてくれないとは。
ってゆうか誰かに襲われたりしてもいいのでは?!(願望ではないが)
あいにく私の乗ってきた電車は終電だったので、誰も気付く人もいなかったらしい。
しかし向かいのホームの人が気づいてくれてもいいと思うのだが…。
まあ、私が駅で、地べたに寝ていて豪快に笑っている女をみたらどうするだろうか…ほっとくかもな。
こわいもんな。